大判例

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東京高等裁判所 昭和28年(ラ)284号 決定

、再抗告理由の第一点の要旨は、結局のところ、請求異議の訴による強制執行の停止決定に対しては即時抗告が許されないのにかかわらず、即時抗告を受けた原裁判所はこれを適法のものとして、強制執行の停止決定を取消したから、原決定は違法である、というに帰する。再抗告人の所論のように、強制執行の停止決定に対しては、民事訴訟法第五〇〇条第三項を類推適用し又その他の理由によつて、即時抗告を許すべきでないとの理論は十分に考えられ、又その理論によつた各高等裁判所の判例の存することも認められる。しかしながら、民事訴訟法第五四七条第二項以下による強制執行の停止決定は執行裁判所でない受訴裁判所の裁判であり、この決定に対しては第五〇〇条第三項後段のような規定が存しないから、第五五八条の規定の適用を排除すべき積極的な根拠もなく、従前の大審院の判例(昭和六年一二月一八日決定、昭和一一年二月六日決定、民集一五巻二号一四七頁)も、右停止決定に対しては即時抗告を許すとの態度をとつている。第五四七条第二項以下による強制執行の停止決定は本来債務名義の執行を一時停止するという例外的な裁判であるのであるから、もしその裁判に誤りがあつたとすれば、一時も早くこれを取消して債務名義に基く強制執行を続行せしめるのが、強制執行の本来の精神に合するのであるから、実質的にも右強制執行の停止決定に対しては即時抗告を認めるを相当とし、第五四七条第二項以下の停止決定と第五〇〇条による停止決定とは停止の要件についても差異があつて、必ずしも同一ではないから、第五〇〇条第三項後段の規定は第五四七条には準用せられないと解する。これに反する再抗告人の主張は採用しない。

第二、再抗告理由の第二点は、原決定は審理不尽と理由不備の違法があるというのである。しかしながら、抗告裁判所が抗告人その他の利害関係人を審尋すると否とは抗告裁判所の自由裁量による判断によるべきことで、その審尋をなさないで原決定を取消したとしても、その一事を以て原決定が違法であるとは断じ得ないし、又本件記録を精査しても、原決定のように抗告人の異議のための主張が法律上理由ありとは認められないことも、一応は認められるのである。抗告人はその主張する賃料損害金が高額で民法第九十条に反するとの主張に対し、原決定はなんら判断していないから、理由不備の違法があると主張しているけれども、原決定の判断によれば、賃貸借契約が存在していないと認定しているのであるから、右のような点の判断は不必要であるのでなされないのに止まつて、その判断をなさないからといつてなんら理由不備の違法をきたすものではない。

本件記録をみても、外に原決定にはなんらの法令に違背した点も認められないから、本件抗告を棄却すべきものとし、主文のように決定する。

(裁判官 柳川昌勝 村松俊夫 中村匡三)

再抗告の理由

原抗告審決定は請求異議の訴に基く強制執行停止決定(以下停止決定と略称する)に対する即時抗告につき之を取消す決定であるが之は法律違背である、其の理由は、

第一点即時抗告は出来ない。

一、民事訴訟法(以下民訴と略称する)五四七条二項による本件停止決定に対し本件の即時抗告は民訴五五八条の「強制執行の手続に於て口頭弁論を経ずして為す事を得る裁判に対しては即時抗告を為す事を得」との規定により為され、抗告審は之を容認したが同条による即時抗告は許されない。

若し夫れ之を容認するとせば、請求並に執行の両異議の訴、及び之に随伴する執行停止の各条文は事実上空文に帰し異議者の権利保護は抹殺される重大結果を招来し其の狂的結果は世の怨嗟嘲笑を買うであろう。

何故なら、即時抗告は民訴四一八条の「即時抗告に限り執行停止の効力を有す」との規定あるを以つて停止決定の執行停止(又は執行取消)の効力は即時抗告を為すと同時に停止されるから即刻執行は続行される。法は執行を停止するばかりでなく、執行の取消までして異議の訴を判決まで持続される事を目的として居るのに、斯は何事ぞ、而かも実際に於ては忙がしい思いをして且巨額の保証金を供託までして停止を取りやれやれと一安心、本訴に於て勝訴の自信に燃えて居る矢先き、一片の即時抗告状により簡単に其の全部が一蹴されるのである、斯る馬鹿気た事が人類の生活に於てあり得るか勿論法の予期する所ではない。

更に若し夫れ即時抗告容認論者が即時抗告による執行停止は無いと謂わんか、自己弁護も狂的であり最早論外である(執行吏役場では即時抗告をしたからとて続行を申し出る者がある由、執行吏は之を拒否して居る実情にある、よろしく裁判所は之に対し明快なる指示を与える責任がある)。

二、即時抗告を許さない法的根拠

(一) 民訴五四七条二項には「判決を為すに至る迄」とあるから、停止の効力は其の間微動だもしない事明瞭一点の疑いを容れない効力を有する事蓋し当然である、左れば之れで充分である、簡単明瞭其の効力の有続期間を明示して居る、口頭弁論を経ないで為す裁判であつても其の効力存続期間を明示して居る以上之れが取消変更が出来ないのは当然である、即時抗告は之が取消変更を求むる事を目的として居る、其の即時抗告の目的よりして氷炭相容れざる事明瞭である。

(二) 民訴五〇〇条三項の不服申立禁止の条項があるのは其の停止は「一時停止」である、決して本案判決に至る迄の停止ではない、一時停止であるから特に不服申立を禁ずる条項を附加規定したが一時停止ではない、本案判決に至る迄の停止であるから特に不服申立禁止の規定を設けなくても之を許さない事は自明の理と謂わねばならない。

(三) 判例は何れも民訴五〇〇条三項を民訴五四七条二項に類推適用すると判示して居る。それは五〇〇条の停止決定は本案の訴訟である控訴、上告、再審民訴四〇九条の二の訴を維持する為めの停止で、本訴維持と云う停止の目的よりして彼此同性質であり、何れも本訴に附随した仮りの処分で独立性がない故に異議の訴に附随する五四七条二項の停止決定に対しては之を類推適用し即時抗告は之を許さない、なお、異議の判決に於て取消、変更、認可がされる意味よりして仮の裁判である事、異議の訴提起後判決言渡迄の間異議の原告保護の為めの応急的裁判であり、自体独立性がない故に民訴五五八条の裁判に該当しないと判示して居る此の判例よりしても抗告審決定は違法である。

(福岡高昭二三(ラ)  一九号 同二四、七、一五、判決)

(札幌高昭二六(ラ)  一五号 同二七、二、二〇、判決)

(東京高昭二七(ラ)第一九六号 同年九、一二、  判決)

(強制執行競売法判例総覧追加編八三、八四、八五丁参項)

(四) 更に民訴五四七条の次条五四八条三項に不服申立を禁ずる規定がある、其の規定による「右裁判」とは単に同条のみの裁判ではなく其の前条の裁判をも指称すると解する事が出来る。

それは同条は前条を受け継いだ条文で、異議の判決に於て「前条に掲げたる命を発し又は前条の命を取消変更、認ずることを得」と云う規定であるから、前条を前提とした関連条文である。左れば民訴五四七条二項と民訴五四八条とは二つの条文になつて居るけれども、一つの停止と云う事に関する条文であるから之を一条に規定してもよい条文である。即ち本訴維持の為めの停止裁判、その後始末の裁判に就ての規定であるから其の後始末の裁判に就てのみ不服申立を禁じ、其の前提裁判である停止に之を許すとせば後始末の裁判などあり得ない事になる、此の二つの条文が飛び離れて存在するなら又格別、続いて存在し且つ条文には前条の裁判も出来ると規定して居る、故に民訴五四七条二項の裁判に対して不服申立を禁じて居ると解す。

(五) 此の停止決定は本案判決に於て取消変更認可がされる規定並にそれ迄効力がある規定よりして受訴裁判所の権限に属する事明らかである、従而他の裁判所の介入を許さないものと解す可きである、若し介入を許すとせば受訴裁判所は判決に於て取消変更、認可をする事が出来なくなり、夫は権限の侵犯となる、故に此の規定よりして即時抗告は許されない、就中前記のように即時抗告に停止の効力が停止されると云うに至つては之を容認す可きでない。

第二点審理不尽、理由不備の違法あり既にして即時抗告が許されない以上他に言及の必要はないが、仮りに之が許されるとして審理不尽、理由不備の違法がある。

一、審理不尽

凡そ裁判は慎重審理して其の主張と証明の機会を与えて之を為す可きは言を俟たない、民訴四一九条には「抗告裁判所に抗告に付き口頭弁論を命ぜざる場合に於ては抗告人其の他の利害関係人を審訊する事を得」とある、故に本件に於ては苟も原停止決定の取消と云う重大なる決定を為すに当つては口頭弁論を命じ、又は利害関係人特に重大なる利害関係人たる再抗告人を審訊し以つて主張の整備補充訂正、疏明の充実につき其の機会を与え以つて決定す可きである。

更に抗告に対する決定は其の決定を為す時の状態に於て之を為す可きである。

故に停止決定のあつた時と抗告審決定をする時とは時日の経過がある、従而其の間に於て本訴の請求原因が頭初は停止申請の理由と同じであつても調査研究の結果訂正、補充、追加等により整備される事は当然であろう。

然れば抗告審が口頭弁論を命じ又は審訊すれば之が明らかになる、従而申請の理由及疏明方法も抜打的に取消決定をし之を告知した事は右法案違背で審理不尽の違法ありと謂わなければならない、而も停止命令申請に於て援用した疏明書類に一瞥も与えた傾向がないと云うに至つてはである。

更に取消決定理由の骨子は「賃貸借の存在はないから之を前提とする減額請求はない」と云うにあるが、真実賃貸借が存在するか否かそれが本訴の重要点であるのに更に審理を為さず、和解条項の文言に捉われて之を為した事は亦審理不尽の結果である。

此の点審理をすれば自ら明瞭になるのであつた、(本訴の請求原因は訂正した不法占拠ではなく賃貸借である。権利金十二万円払い、幾年でも継続する、唯単に一年一年切り替えとし其の都度和解調書を作成して貸す、和解調書は真実に即した条項でなければ其の神聖を冒涜し無効である等主張して居る)。

二、理由不備の違法

又賃貸借にのみ判断し民法第九十条に該当する無効であると云う主張に対しては判断してない之亦審理不尽の結果である。

(本訴に於ては賃料は之により無効、十分の一の額の賃料を払当とすると主張し立証して居る)

(蓋し受訴裁判所以外の裁判所の関与の危険なる事の好例であろう)

三、抗告審決定は其の取消した決定の事件番号の記載がないからどの停止決定を取消すのか不明、以つて無効である。

以上

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